湿性溺水には淡水溺水と海水溺水があり、病態はどちらも肺内ガス交換不全による組織の低酸素症が主ですが、身体の内部ではさまざまな反応がおきます。肺に水が入ると肺のガス交換機能の低下によって、血液の酸と塩基の平衡(※)が乱れて正常よりも酸性方向に傾き、血液のバランスを崩します。これをアシドーシスといいます。
以前は、淡水溺水であるか海水溺水であるか問題にされていましたが、現在では両者を特に区別していませんが、参考までにそれぞれの模式図を載せておきます。
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[淡水溺水]
肺の界面活性物質を破壊し、肺胞に障害を起こします。
淡水による溺水では、吸入された水が急速に肺胞から吸収されて循環血液量が増加し、血液希釈、血清Na・Cl・Ca濃度の低下、血管内溶血が現れます。
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[海水溺水]
海水が高浸透圧のため(3.5%食塩水に相当)、血漿が肺胞へ漏出するため高度の肺水腫をきたします。
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(※)
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酸性かアルカリ性かは、ペーハーという単位で表します。溶液の水素イオン濃度を表す指数で、中性では7で、酸性では7より小さく、アルカリ性では7より大きい。ちなみに p は power(累乗)の略、H
は水素の元素記号で、デンマークの生化学者セーレンセン(S.
P. L. Sørensen 1868-1939)が提唱しました。
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